患者中心主義は精神医療や精神保健福祉で可能か?
患者中心主義は現代医療の中心的概念であり、単純に言えばカスタマーファーストということで、患者の利益を最優先に医療を行おうという考えだと思う。自分の実感では現代ではほぼすべての診療科で採用されているように思える。
ところがである。精神保健福祉法で障害者に定義されているせいか、精神医療および精神保健福祉では患者よりも医療側の判断や家族の判断が優先されることがほとんどだ。精神疾患になった途端に社会的排除の対象として扱われるようだ。
実例を上げると、昔の精神科病院は退院自体をさせる意識はなく、日本医師会会長は精神科病院を「放牧場」と呼ぶ始末だし、現日本精神科病院協会会長の山崎学氏は「保安のため」に患者を入院させるのが目的だと東京新聞のインタビューで答えている。
つまりは、医師会側が自分たちの利益のために地域社会への貢献を名目にして、患者の人権を剥奪させたまま長期入院をさせる側面があり、それが今はフェアネス(公平性)が重んじられた精神科医療の意識になっているのだろうか?
筆者の入院時代がかなり古いのでこういう書きようになったが、G7で採択されたソルファニャーノ憲章に基づき、障害者の立場としてでも構わないから、人権上は世間の人々と同じにして欲しいのである。本音を言えば正しくは精神疾患だと思うので、患者という呼称を用い、社会的地位を保障するべきだとは思う。
患者中心主義の良い点はリカバリーに繋がりやすく、次の方向性が見えやすいという点にある。ドナドナではないが、みんな一緒に何処かへ連れて行かれるような主体性を奪われた一律的な福祉サービスは廃止するべきだと思うし、本人の資質や興味や能力に応じた支援さらには雇用が行われるというのが望ましいと提起しておきたい。
どのような病気にかかっても患者中心主義は当然だと思うのに、精神疾患だと別というのはあまりに無茶振りすぎる。患者にも人生はあるし理由もなく十数年以上の長期入院をさせられてしまう現状は改めるべきだと強く主張したい。
北海道浦河町にある「べてるの家」が降りていく生き方などと患者の主体性を無視するようなイメージを流布するような映画を全国上映したのが二年前だから、「やれやれ」と思うのだが、服薬しながら働いているサラリーマンや教員が珍しくない時代に、精神保健福祉側の認識が数十年遅れというのは頭が痛い。
せっかく決まったG7のソルファニャーノ憲章「障害と権利と包摂の憲章」の内容が日本だけ現場に降りてこずに骨抜きにされるような愚は犯さないで欲しいものだ。
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